少人数で作るラジオのCMはおもしろい。台本も演出も、ナレーションの声さえも自分でやる。僕は今、演出の仕事もしていますが、セオリーは大学で、実践はラジオで学びました。ここでもミキサーの方とのいい出会いがありました。特に辻冽さんとの仕事が始まったときのことはよく覚えています。「こんなものを作りたい、意見を聞かせてください」と言ったら「中谷さんって面白いものをつくるかもしれないな、普通とちがうもんね」と、勇気づけてくれた。そのほかにもラジオ局にはベテランのすばらしいプロがたくさんいて、6ミリのテープをまわしているとひょっこりやってきて「僕だったらここに鳥の声を入れるなあ」と意見をくれる。なるほどその手があるのかと、毎日よく鍛えていただきました。また、言葉についてもこの時期、多くを学びました。僕の本が語りかけるように書かれているのは、ラジオで学んだからです。僕の本は読んでも聞いてもわかりやすい。わかるというのは、頭の中で言葉が映像になることです。